赤字対策で、経営事項審査の受審を検討するとしたら

今回は、財務諸表の比較ではありません。

赤字決算が続いていて、打開策として公共工事への参入や経営事項審査の受審を検討されるとします。

赤字の場合における、経営事項審査の総合評定値について

公共工事は、民間工事と比べて利益率は高いと言われています。

ですので、打開策としては有効でしょう。

ただ業績が不調ですと、受審しても初めから高い総合評定値(受審結果,P点)は期待し辛いです。

それで、受審するかどうかをご検討されるに当たって、財務諸表などで着目したい点について、掘り下げてみたいと存じます。

  • 一般論で。
  • 弊所なりの見解です。

個別の事案によっては、当てはまらない場合もあります。

予めご承知置き下さい。

財務諸表の違いによる分析点の差なども紹介しています。

小数点の端数処理の関係で、見本通りの評点にはならない事もあります。

参考程度でご確認下さい。

経営状況分析点(Y点)

自社の財務諸表をもとに算出するY点、経営状況分析点について見て行きます。

他のページの内容の繰り返しになりますが、Y点で用いる8つの経営指標は次の通りです。

属性記号経営状況分析の指標算出式  
負債抵抗力X1純支払利息比率(支払利息-受取利息配当金)/売上高×1005.1%-0.3%
X2負債回転期間(流動負債+固定負債)/(売上高÷12)18.0ヶ月0.9ヶ月
収益性・効率性X3総資本売上総利益率売上総利益/総資本(2期平均)×10063.6%6.5%
X4売上高経常利益率経常利益/売上高×1005.1%-8.5%
財務健全性X5自己資本対固定資産比率自己資本/固定資産×100350.0%-76.5%
X6自己資本比率自己資本/総資本×10068.5%-68.6%
絶対的力量X7営業キャッシュ・フロー営業キャッシュ・フロー/1億※(2年平均)15.0億円-10.0億円
X8利益剰余金利益剰余金/1億100.0億円-3.0億円

資料出典:9.総合評定値の計算方法 6ページ|経営事項審査関係(千葉県知事許可)

8つの指標について、本ページでは順不同で見て行きます。

大半の項目について言えますが、赤字や経営指標がマイナスになるからといって、経営状況分析のY点の各項目も下限値になるとは限りません。

また経営状況分析Y点を0.2掛けしたものが、総合評定値P点になります。

この辺の計算式については、先の千葉県の資料の1ページ目にも記載されています。

収益性に関する指標について

X7は営業キャッシュフローに関する指標です。

営業キャッシュフローは、税引き前当期純利益に、現預金の増減に影響する勘定項目を加減算して算出されます。

経営事項審査にかかわらず、前期末から当期末にかけての現預金の増減に、大きく関わってくる指標です。

X7は、小規模建設業者の場合、非常に差になって表れにくい指標です。

営業キャッシュフロー自体を1億円で除算するせいです。

  • 営業キャッシュフローが1,000万円のプラスでも、X7は0.1。
  • 営業キャッシュフローがマイナスでも、X7はマイナス0.1です。

仮にですが、現預金が毎年1千万円ずつ増える建設会社というと、周りからは相当な優良企業の印象でしょうが、経営事項審査に限っては、つけ入る余地はあると言えそうです。

営業キャッシュフローがおおよそ700~1,800万円の幅で変動すると、Y点が1~2点変動する試算です。

なお、一般的な営業キャッシュフローの改善策として、棚卸資産(在庫・仕掛品)の削減が挙げられます。

建設会社(法人)の場合、棚卸資産が自然と少なくなるであろう3月や9月に、初めから決算月が設定されているものと思われます。

経営事項審査に限っては1億円で除算するため、棚卸資産削減の営業キャッシュフロー改善効果は、非常に限定的です。

棚卸資産の残高については、資金繰りなどの観点で評価した方が望ましいでしょう。

利益剰余金(X8)

X8は利益剰余金に関する指標です。

X7と同じく1億円で割ります。

赤字決算が短期的なものであれば、プラスの場合も多いでしょう。

利益剰余金もマイナスの場合は、資産や資本を借入で補っている状態です。

債務超過とも言われ、経営は厳しい状態です。

指標における点数の性質も、X7と似ています。

係数がX7より小さいため、影響もより限定的です。

利益剰余金が約8,000~3,500万円の幅で変動すると、Y点が1~2ポイント上下する試算です。

大企業向けの項目です。

売上高経常利益率(X4)

X4は売上高経常利益率です。

先のX7やX8と異なり、1億円で除算するといった処理はありません。

自社の経常利益率をそのまま当てはめられます。

経常利益率0.5~0.2%の変動で、1~2ポイントY点が上下する試算です。

売上高が5,000万円の企業でも、10~25万円程度の差です。

経常利益は、必要な経費をほぼ控除した後の利益額なので、やり繰りできる余地は乏しいです。

それでも減価償却費の計上の仕方次第で、変動はします。

一方で、経常赤字で経営事項審査上は不利でも、欠損金を繰越控除すれば、翌年度の課税面では有利に働く事もあります。

参考までに、損益がゼロの場合と売上高経常利益率がマイナス2%とで、Y点は9点ほどの差です。

マイナス2%だと、売上高5,000万円で100万円の経常損失高です。

総資本売上総利益率(X3)

X3は総資本売上総利益率です。

売上総利益率は、粗利益率とも言います。

下限値は6.5%です。

売上高5,000万円の企業で、325万円です。

収益性の改善が根本策なのはもちろんですが、チェックしたい項目は次の通りです。

  • 人件費や労務費、外注費、役員報酬といった広義の給与。
  • 減価償却費。

これらは、売上原価に含めるもの(売上総利益の減少要因)と、販売費及び一般管理費(営業利益の減少要因)に区別されます。

両者の違いについては、下記のリンクをご参考下さい。

売上原価と販管費の違いとは?費用の内訳を詳しく解説!|ITトレンド

試算表や過去の決算書を確認して、これらの区分で曖昧に感じるところがあれば、顧問の税理士さんなどと相談されても良いかと存じます。

先ほどの集計方法の解釈の違いによっては、50~100ポイント変わって来ても、不思議はありません。

分母の総資本については、ルールがあります。

総資本が3,000万円に満たなくても3,000万円とみなす、とされています。

分数なので、基本は分母が小さい方が計算結果は大きくなりますが、経営事項審査のこの指標に限っては、極端に資産を圧縮しても、反ってデメリットになります。

そうならない範囲で、設備投資を抑えつつ効率よい経営が出来る企業の方が、このX3とY点も高くなります。

25%の企業と5%の企業とで、88ポイント程度の差です。

総資本3,000万円の企業であれば、売上総利益は750万円になります。

数字だけ見ると大きいですが、先の労務関連の費用だと、これに近い額を使っていても不思議はありません。

販管費で計上してもよい経費が、売上原価で計上されていれば、売上総利益が数百万単位で変動するようなケースもないとは言えません。

現時点で最終赤字でも、評点アップが期待度が高い指標と言えそうです。

財務健全性(X5・X6)

  • X5は自己資本対固定資産比率。
  • X6は自己資本比率です。

財務健全性をみる指標です。

計算の傾向はX3と同様です。

固定資産や設備投資が小さい企業は、有利です。

自己資本・利益剰余金が大きい企業、借入金の少ない企業も有利です。

  • X5は5~13%で1~2ポイント。
  • X6は0.6~1.6%で1~2ポイント。

上記のようなY点のポイント差になって、表れます。

この2つの指標は経営の「結果」であって、能動的に数値の改善を図るのは難しいという評価です。

複数年の経営努力の結果が数値になって表れる性質のものです。

ただ、リース主体で運営している小規模建設会社の場合、得点が見込める分野でもあります。

それが次のケースです。

自己資本対固定資産比率(X5)の場合

固定資産が最小で、自己資本がプラスでありX5が最高得点になった場合、Y点は65点ほど加点されます。

仮にX5が50%でも9点ほど加点になります。

自己資本がゼロ~マイナスの企業と比べれば、優位です。

自己資本比率(X6)の場合

自己資本比率が13.3%前後でも、20ポイントY点が加点されます。

上記の場合、総資本が3,000万円であれば、自己資本は400万円です。

次のX2でも述べますが、資金繰りに支障がない範囲で、決算前に短期借入金を返済して小さくできれば、相対的に自己資本比率は高くなります。

負債抵抗力(X1・X2)

  • X1は純支払利息比率。
  • X2は負債回転期間です。

この2項目を合わせて、経営事項審査では負債抵抗力と呼んでいます。

この2項目については、値が小さい方が高評価です。

運転資金を借入で賄っている企業では、短期的な改善は難しい項目です。

ただ、資金繰りにある程度の余裕があり、決算のタイミングで短期借入金を返済して少なくできれば、X2の改善にはなります。

回転期間が5か月と8ヵ月の建設会社でも、25ポイントほどの差になります。

  • 年商4,800万円で負債合計が2,000万円であれば、回転期間は5か月です。
  • 年商3,600万円で負債合計2,400万円であれば8ヵ月です。

経営規模に関する完成工事高の評点

ここまでY点についてみてきました。

ここでの売上には兼業売上も含みます。

一方、競合と比べて完成工事高に自信のある建設会社であれば、経営規模に関する完成工事高の評点が期待できます。

民間工事で実績があるものの、利益率で苦しんでいるようなケースでは、有利に働きます。

こちらは業種ごとの計算になります。

その分ウエイトも高いです。

つまり赤字であっても

長くなりましたが、赤字であっても経営事項審査の総合評定値P点に関して、取り組む価値がありそうなイメージを、お持ち頂けるのではないかと存じます。

経営改善の一環で、受審をご検討中などであれば、ご参考にして頂ければ幸いです。

ご質問などもお待ちしております。

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Posted by 行政書士 吉永